松下『成熟と洗練』の奨め

  政治学者・松下圭一が没して10年になる。松下は壮大な構想力で理論を現代化し現代を理論化した政治学の泰斗であった。私は近代の知の巨人が福沢諭吉であったとすれば、現代のそれば松下だと思っている。彼は厖大な著書で市民政治理論を展開したが、50冊目の最後の著書が2012年の『成熟と洗練―日本再構築ノート』(公人の友社)だった。彼は晩年、市民文化の「成熟」と「洗練」された市民政治の予測に逆行し、怠慢と拙劣な対応を露呈する現実の政治・行政の様相に、日本の「没落」を予感し「焦燥」を募らせた。「没落と焦燥」も松下の言葉である。それゆえに、「日本再構築」のために、これまで繰り返し説いてきた「成熟と洗練」に向けた諸論点をあらためて書き遺したのが本書である。出版から10年以上たつが昨日出た本と錯覚するほどの新鮮さがある。首相もつくれなくなった政党政治の劣化に目を覆いたくなる日々だが、かといって私に何かいえるわけでもない。それならばこの本をお薦めすることがいまやれる最良のことではないかと考えた。2500円、260頁。収められた78の小論は読みやすくどこから読んでもよい。私はずっと枕もとに置いている。庭の開花→アキチョウジ(171

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