議員間討議の効用―競争から協奏への飛躍 (別海町議会一般質問検討会議見学記)

 議員間討議の効用―競争から協奏への飛躍

 2025218日、別海町議会の「一般質問会議」(以下「検討会議」)を見学する機会に恵まれた。私にとってはたいへん有意義な見学であった。「一般質問」は、個々の議員が長など執行機関に対して行なうもので、町政が町民のために適切に行われているかチェックし、また必要な政策を提案する場でもある。年4回の定例会の期間中に、1人当たりの持ち時間は1時間(答弁との往復)で、一問一答方式で行なわれる。

検討会議は、この一般質問に先だって行われる。質問者があらかじめ質問のテーマと目的、質問事項とその内容を文書にまとめて公開し、これを全議員の出席のもとで、各議員からさまざまな感想や補強意見をもらい、これを参考にして質問の内容をさらに充実させるというものである。検討会議はもちろん町議会の常設的なシステムとして位置づけられている。

別海町議会には、土山希美枝氏(法政大教授)と西科純氏(元芽室町議会事務局長)の2人のサポーターがいる。町議会と2人の関係にはいわれがある。数年前、西科氏が代表の議会技術研究会が開いた議会フォーラムに参加した議長らが、このときの土山講演に触発されたことが検討会議をはじめる契機になったという。その後、2人は別海町議会のサポーターになって、この日の検討会議でも実践的で適切なアドバイスを送っていた。

 検討会議はもちろん住民や報道機関に公開しており、この日も2社が取材にきていた。こうしたやり方を続けているうちに質問する議員が増えて、16人の議員中、今回は8人が質問する。10人を超えるときもあるという。質問者数の確保に悩む議会が多いなか、別海町議会にける質問者数の多さには目を見張るものがあるが、検討会議が各議員の質問意欲と自信の向上に大きく貢献していることは間違いないと思う。

 私が検討会議に注目するのは、これにより「議員間討議」のすそ野がひろがることに大きな期待を寄せているからである。議会の最高規範とされ全国に拡大した議会基本条例には、最大公約数的にいえば「住民が参加する議会」(住民参加)、「議員同士が議論する議会」(議員間討議)、「政策を提言する議会」(政策提案)の3つの理念を掲げている。

 このうち議員間討議がカギでこれが実現しなければ他の2つの理念も画餅に帰す。例えば、住民参加を行なって住民の要求を集めても、議員が議論してそれを議会(委員会)の意思に変換しなければ議会としての政策提言はできない。その意味で議員間討議は、議会改革のなかでも枢要な課題といってよいのである。

 また議員個人の意思や政策は、たとえそれが優れたものであっても、個人対長の対応関係で提起される場合は実現の可能性が小さい。やはり議員間討議を通して複数議員対長ないしは議会対長の関係において提起されるほうがはるかに実現性は高くなる。その意味で議会が行政監視や政策提言という本来の使命を果たすために議員間討議は欠かせない。

 議員間討議はそれほど重要な議会改革の課題なのだが、一般的にどこの議会でもなかなか実現しない。それは議員間に競争の意識が働くからである。選挙において「敵」となる相手に塩を贈る行為には心理的に抵抗感があるからである。けれども、一般質問検討会議のようにどの議員に対しても公平に開かれた議会のシステムとして行われる以上、自分もその恩恵に授かることができるし、議会全体の力量と住民からの評価を高めることにもつながる。このような認識が議員に共有されたとき議員間討議ははじめて可能になる。

上に一般質問会議は議員間討議の一種と述べたが、福島町議会のように常任委員会が委員間討議を活発に実施して年間30項目前後の委員会としての政策提言書を行政に対して提出しているケースもある。扱うテーマも住民、議員、行政からくるものと多彩である。このように常任委員会が政策討議の場に変われば、一般質問とその内容、また、答弁内容の議会としての事後追跡、さらには住民の請願・陳情のあり方も当然変わってくる。

私は別海町議会のことはこの検討会議のことしか知らないから、議会の活動全体にのなかで検討会議がどのような位置づけでなされているかわからない。けれども、数人の質問者が「委員会の議論をふまえて」、あるいは「委員会の総意として」質問する、「この先の委員会の議論を深める観点から町長の見解をうかがう」とか、「そのために不可欠な〇〇の資料の作成と提供を求める」などと、委員会の議論をはっきり意識して発言していた。

私はこのことに一番注目した。検討会議を見学して、議員間討議が、町政の課題の共有、個々の議員の力量の向上、質問内容の高度化、行政への影響力の増大をもたらすという議員共通の認識を深め、ひいては議会の力量が高まることによって、議会に対する住民の信頼も増すに違いないと確信した。質問者の少なさに悩む多くの議会に比べて、16人の定数中半数以上の議員が質問に立つ意味と意義をしっかり読み取らなければならない。

そしてこれらをふまえて一般論的にいえば、常任委員会における議員間討議による政策討議と委員会としての政策提言の活性化を軸にして、これに一般質問あるいは委員会代表質問、質問・提言に対する長の答弁内容の事後追跡などをよりシステマチックに関連づけて実行すれば、議会全体としての議員間討議の実効性はより高まると思った。

そうして議員間討議が議会運営の日常の姿になれば、個々の議員が独奏する「議員間競争の議会」から「議員間協奏の議会」へと議会全体がオーケストラに進化して、住民という聴衆を前に素晴らしい音楽を奏でることができるのではないかと、大きな期待を抱いて帰ってきた。この競争から協奏への進化が個々の議員にとっても大きな利点をもたらすことはいうまでもない。この認識の共有があるか否かで議会の姿は大きく変わる。

その一方で、いま気にかけている議会における政党会派の問題点がより浮き彫りになった思いを強くした。札幌市などの大都市や道など広域自治体の議会とこれら基礎自治体の先進議会を比較すれば雲泥の差がある。大規模議会には政策をめぐる議員間討議はほとんどなく、あるとすれば会派内の議論だが、この閉ざされた議員集団の様子は住民にはほとんど見えない。この会派あって議会なしの問題状況は昔も今も変わらない。

議会改革のなかでも一番難しいと思われた議員間討議を実践する先進議会が市町村に出はじめ、また、この効果が見えはじめた現在、これらの議会に集ってもらって、「議員間討議が拓く新しい政策議会像」とでも題して議員・議会フォーラムを開催してみたい。たくさんの議員のみなさんに一緒に考えてもらえば、即戦力になる議会改革の実践的な展望を拓くことに大いに貢献できるのではないか。そうした思いを強くして帰宅した。

*本稿は、私の所属する議会技術研究会の運営委員の方たちに送ったレポートです。

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