都道府県議会へのある提案(自治日報 2018年6月8日号から転載)

 都道府県議会へのある提案 

  10年ほど前、都道府県議会について一つの問題を提起したことがある。地方分権改革によって国と自治体の関係のタテマエが、「上下主従から対等協力の関係へ」と変化したのにともない、それまでは国を補完し国の出先機関的要素の強かった都道府県は、これからは市町村の補完を第一義とする広域自治体に様変わりするのだから、都道府県の議会もこの変化をふまえて自己のあり方を再構築しなければならないのではないか、と考えたのである。

当時は、議会基本条例がひろがりはじめ、都道府県レベルでも三重県議会に数道府県が続くなど、議会改革の流れが全国化しつつあった。けれども、道府県の議会基本条例を一瞥すると、市民参加などは理念的・抽象的な表現にとどまり、また「広域自治体の議会」という特性をふまえた議会の役割や運営に関する記述を発見することはできなかった。

そこで一つの提案を思いたった。すなわち、現行の都道府県議会は、行政の部門別タテワリに即して事務を所管する常任委員会を議会活動の中心に据えているが、これにくわえて、一定の地域を対象にする複数の地域別常任委員会(域内選出議員を委員とする)の設置による、面的なヨコワリの政策活動をもう一つの焦点にすべきではないか、という提案である。この内容は、全国都道府県議会議長会報の2009715日号と本紙(自治日報)2010212日号で「府県議会に市町村参加を」と題して紹介した。

このころはすでに地方自治法改正によって、議員の複数常任委員会所属ができるようになっていた。そのうえで、地域別常任委員会の設置には、次の三点において大きなメリットが考えられた。第一は、広域自治体の議会として実効ある市民参加を推進する可能性をひろげる。基礎自治体の議会は、さまざまな方法で市民との交流を試みているが、広域自治体の議会は、まさにその広域性のゆえに困難がともなう。とはいえ市民を代表する議会の本質からいって市民参加は素通りできない。

 基礎自治体レベルの市民参加は、①個別事業や特定政策にかかわる利害関係者の参加、②総合計画などの一般的な政策課題への市民参加、③コミュニティ・レベルの市民参加に大別できるが、広域自治体では、①はともかく②と③はなかなか難しい。そこで、普段から地域の課題を熟知している市町村の首長や議会が、個々の市民に代わって都道府県政に参加する、いわゆる市町村参加が有効な手立てになり、地域別常任委員会はそのための恰好の場になれる。

 第二は、議会の政策活動のレベル・アップにつながる。広域自治体の行政は極度の分野別タテワリで、面としてのひろがりをもつ地域ヨコワリの政策機能は著しく劣っている。だから議会の活動はこの点に着目しなければ、画竜点睛を欠くことになる。地域別常任委員会とそこへの市町村参加は、タテワリ行政の欠点や問題点を顕在化させるのみならず、それをふまえて地域に基礎をおいた議会ならではの政策提案をおこなうことができる。

 第三に、広域自治体における地域行政の再構築を促進させる。たとえば北海道では、14の地域総合出先機関は「支庁」から「振興局」へと名称変更したが、振興局が市町村参加をふまえて道の地域政策を立案・執行する「政策型」の出先機関にはなっていない。そのため道政は地域の政策課題を的確に把握できず、市町村を補完する広域自治体としての仕事ができない。この域内分権をおこなう第一義的な責任は知事にあるが、その遅延を許している責任は議会にもある。

 議会が率先して地域別常任委員会を設置し、これを活用して議会独自の道民・市町村参加の推進のもとに、地域に視点をおいた行政監視と政策提案をおこなう議会に変身すれば、行政もまた「政策型」出先機関への改革に真剣に取り組まざるをえなくなるのは必定である。これは引き続く道政の重要課題であるが、北海道だけではなく、とくに管轄面積がひろく、また市町村数の多い広域自治体に共通する問題である。

地域別常任委員会はまだ陽の目をみていない。だが、32に増えた議会基本条例中、宮城、長野、青森の県議会は、市町村との交流を謳っている。また、三重県議会は2010年から「市町村議会と県議会の交流・連携会議」を試行している。この会議の恒例化は今後の課題とされているが、貴重な経験は他の都道府県議会にとっても道標的な意義をもっている。あらためて想起しておきたい。

議会改革10余年の流れのなかで、都道府県と指定都市などの大規模議会のあり方が問われはじめた今日、地域別常任委員会のような政策活動における地域枠組みの必要は、ますます大きくなっていると思う。そう考えて再び提起した次第である。

 (*319日付けの本ブログで公開した「道庁スルー……」中で触れた都道府県議会における「地域別常任委員会」の設置について説明を補足するため、かつて提案した小論を転載しました。)

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