あの本を読んでいたら

 息子手製のケーキに舌鼓を打ちながら家族で3時のおやつ。食べ物にちなんでローラ・インガルス・ワイルダーが話題に。彼女の著作は1950年代から多数翻訳され、わが家でも昭子がそろえて全員の愛読書になった。私は1970年代の半ばに『農村と少年』を読んで、もし少年時代に出会っていたら、人生は大きく変わっていたかもしれない…と思うほど深く感動した。ローラがアルマンゾ少年の目線で描いた19世紀末の北米の農村は、私が子どものころの、機械化する以前の北海道の農村と酷似していた。家畜を飼って馬を馴らし、羊の毛を紡いで衣類を編み、イタヤカエデから甘味を得、ヒッコリで橇をつくる。そこには家族が役割を分担して農に勤しむ、生気みなぎる世界が描かれていた。プラオやハローなどの農具の呼称も同じだったから、遠い世界の話ではなく、唯一違いがあった食生活の豊かさをふくめて、すぐにでもアルマンゾの農の世界にたどり着ける思いを抱いただろう。私には高校進学をやめて農業を継ごうと真剣に考えた時期があった。もしこのとき、ローラの本に出合っていたらどうなったか…。ケーキを味わい若き日の儚い想いが脳裏によみがえった。

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