森のしずくと六七さんと
この時期になると、新聞などでシラカバの樹液に関する記事を時々見かける。カエデの樹液、すなわちメイプル・シロップはひろく知られているが、シラカバの樹液はさほど一般的ではない。淡い白濁色でほのかに甘い上品な味がする。これを町の特産物にしようと最初に着想したのは道北の美深町で、30年ほど前に「森のしずく」と名づけて開発をはじめた。美深町は自民党の道議会議員で議長を務めた故西尾六七さんの故郷。六七さんは戦後最初の選挙で町長になって以来、一貫して自治体政治に情熱を注いだリベラル思想の政治家。勉強家で地方自治に造詣が深く北大に赴任した直後から晩年まで親しくしていただいた。「札幌の道議は地方を知らない」が口癖で、そのために議長時代に工夫された試みが、後に私が道議会に地域別常任委員会の設置を提案するヒントになった(ラベル「一言閑話」参照)。美深町を幾度も訪ねてまちづくりの現状や課題を多々教わるなか、チョウザメの養殖とともに出会ったのが「森のしずく」である。昔からシラカバは「馬鹿の木」と揶揄されて利用価値が低く見られてきたが、「森のしずく」という清新・清涼なイメージで再評価されたことに目を細めた。拓北の森のシラカバももうすぐ鼓動を打ちはじめる。美深町のたたずまいと六七さんの面影がしのばれる。
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