難しい言葉で散歩する人
雪がとけて散歩する人が増えてきた。大手を振って急ぎ足で歩く人、ペットと話しながら行く人、足を止めて草木の芽吹きに見入る人…。昨日は驚いた。小雨のなか見かけない高年の男女が家の前を通る。女性が「妹さんたち元気?」と問えば、男性は「カイロウドウケツ」と。女性は「ホホホ…」。耳を疑った。「カイロウドウケツ」は「偕老同穴」のことだろう。もちろん日常用語ではない。かつて読んだ『福翁百話』だったと思うが、福沢諭吉は確か「一夫一婦偕老同穴」と書いていた。夫婦たるもの愛情を育んで生涯寄り添って生きるべしという道徳論だ。こんな言葉で通じ合えるのはどんな人たちなのだろうか。ついでに一言。諭吉は「一身独立して一国独立する」のだから、国民たる者は「独立自尊」の「市民」(いちみん)たるべし、と。諭吉を象徴する言葉だ。けれども、その一方で、「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」と人間平等をいいながら、この市民をつくる子育てを担うのは妻だから、もし女性が血統、健康、知能の一つでも欠いていたら結婚するなともいう。今日の人が聞いたら女性蔑視、人権無視と驚くだろう。諭吉も人の子、時代の拘束は免れ得なかったということか?
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